砂肝のつき出し
阿佐ヶ谷の一ぱい飲み屋”角八(かどはち)”では、とてもおいしい砂肝の煮つけをつき出しに用意していた。量は少ないが、こいつはその店のほかのどの料理よりもうまい。つき出しだから当然無料である。一杯飲む客より五杯飲む客の方が、店にとってよい客のはずである。なのに、コップ一杯あたりのサービスは、よい客の方が少ししか享受できない。これが矛盾でなくてなんであろう。「どうして二杯目には砂肝がつかないの?」意地きたなくも主人に質問してみたことがあった。親父はしばらく質問の主旨がのみこめないらしく、目をぱちくりさせていたが、「そりゃ、兄さん、つき出しってものは、人につくものですからね」となにやらわかったようなわからないような説明をする。(「食卓はいつもミステリー」 阿刀田高) 社会に出たてのサラリーマンだった若き阿刀田のエピソードだそうです。角八って今もあるのでしょうか。
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